こんにちは、てぃーです。
今回は、在宅勤務・リモートワークの普及とともに急速に利用者が増えているWeb会議ツールZoomの創業者でCEOのエリック・ユアン氏を取り上げたいと思います。
ZoomはかつてのFacebookやTwitterと同じように評価額10億ドル以上のユニコーン企業と呼ばれるだけでなく、その後も黒字で上場を達成した数少ない会社のひとつです。
中国で育ったエリック・ユアン氏がシリコンバレーに憧れを抱き、スタートアップでエンジニア集団のトップに昇りつめ、ゼロから開発したZoomを世界中で利用されるサービスに成長させるまでの軌跡を紹介していきたいと思います。
目次
プロフィール
氏名:Eric S. Yuan
生年月日:1970年
出身:中華人民共和国 泰安市
Twitter:https://twitter.com/ericsyuan
経歴
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山東科技大学で応用数学、コンピューターサイエンスの学士号を取得
中国鉱業大学で鉱山工学の修士号を取得
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1994年
日本に4か月滞在した際にビルゲイツのスピーチに触発される(24歳)
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1997年
9回目の申請でビザを入手してアメリカでWebExに入社(27歳)
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2007年
WebExがCisco Systemsに買収される(37歳)
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2011年4月
Cisco Systemsを辞めてZoomの前身となるSaasbee, Inc.を創業する(41歳)
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2011年6月
シードラウンドで300万ドルの資金調達に成功する(41歳)
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2012年5月
社名をZoomに変更する(42歳)
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2012年8月
Zoomビデオ会議サービスを提供開始(42歳)
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2013年1月
シリーズAラウンドで600万ドルの資金調達に成功する
(43歳) -
2013年5月
ユーザー数が100万人を突破する(43歳)
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2013年9月
シリーズBラウンドで650万ドルの資金調達に成功する(43歳)
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2014年6月
ユーザー数が1,000万人を突破する(44歳)
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2015年2月
シリーズCラウンドで3,000万ドルの資金調達に成功する(45歳)
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2017年1月
シリーズDラウンドで1億ドルの資金調達に成功する
(47歳) -
2019年4月
NASDAQに上場(49歳)
シリコンバレーへの憧れ
社会人になるまでずっと中国で生まれ育ってきたエリックが、アメリカのシリコンバレーに憧れを抱くのにはきっかけがありました。それはなんと日本での出来事なのです。
エリックが仕事の関係で日本に駐在していた時に、ちょうど来日していたマイクロソフトのビル・ゲイツのスピーチを聞く機会に恵まれます。当時はまだインターネットが普及していない頃でしたが、ビル・ゲイツは既にiPhoneやFacebook、Netflixのようなテクノロジーが当たり前になる未来を予見しており、エリックはそのスピーチに感銘を受けてシリコンバレーに憧れるようになります。
中国に戻ったエリックは早速アメリカへ渡るための準備を始めますが、就労ビザを手に入れるまでになんと1年半以上かかり、その間に8回もの申請を却下されています。この経験を通して決してあきらめないことの大切さを学んだそうです。
800人のエンジニア集団のNo.2まで昇りつめる
エリックは渡米して最初の会社でこの先の人生において重要な経験を積むことになります。彼が最初に選んだのは、当時まだ設立2年目のスタートアップでビデオ会議システムを提供するWebExでした。当時のエリックは英語も話すことが出来なかったため、初期エンジニアの1人としてWebExの開発を担当することになります。
その後、エリックはWebExの成長とともにキャリアを積んでいきます。WebExはドットコムバブルとインターネットの速度向上の恩恵を受けて、2000年7月に上場し、2007年に320万ドルでCiscoに買収される中で、エリック自身もマネージャー、シニアマネージャー、ディレクター、シニアディレクターへと昇進し、なんと技術部門のNo.2を務めるまでになります。
はじめは数年シリコンバレーで経験を積んで帰国するつもりだったエリックでしたが、まだ小さかったWebExが成長していくうちに製品や仲間に対する想いが強くなり、次第に中国へ戻ることは考えなくなっていました。
14年間勤めた会社を辞め起業する
WebExに入社して14年経った2011年にエリックは新たな一歩を踏み出します。入社当初10人だった開発チームは800人の組織になり、売上もゼロから年商8億ドルを超えるほどに成長したWebExでしたが、エリックは自分の仕事に誇りを持てなくなっていました。
その理由は、WebExのユーザーが幸せになっていないことに気づいたからでした。当時のWebExは接続速度が遅く、画質・音質が悪く、モバイルに対応していない等の課題を抱えており、エリックもWebExを大きく刷新する必要があることを訴えていました。
しかし、CiscoはWebExの刷新のほかに優先すべき課題があるとして、エリックの提言が受け入れられることはありませんでした。やむなく彼は部下40名とともにWebExを辞めて、自らの手で新しいビデオ会議ツールを開発するために、2011年4月Zoomの前身となるSaasbeeを立ち上げます。
Zoomの誕生
既にSkype、Google Hangouts、WebEx、FaceTimeなどのソリューションが乱立する中で、ビデオ会議の市場に参入することに注目は集まるはずもなく、出資を検討する投資家もいませんでした。一方で、エリック自身は顧客に向き合い続けてきた自負と、ビデオ会議に特化したソリューションはまだ世の中にないと考えており、自分たちのビジネスに勝機を見出していました。
実際にエリックは2011年7月のシードラウンドで300万ドルの資金調達に成功しており、出資者の中にはWebExを創業したSubrah Iyarや、ベンチャーキャピタリストでZoomの名付け親でもあるJim Scheinmanが含まれています。Jimが子供のために読んで気に入っていた『Zoom City』という本から名前を取り、2012年5月Saasbeeは社名変更しZoomに生まれ変わります。
初期のZoomはユーザビリティを追求した以下の特徴を備えていました。
・Facebook、Googleアカウントでログイン可能
・ワンクリックで通話を開始可能
・15人まで参加可能
・ショートメッセージ、Eメール、Google、Facebookで招待可能
・高画質な映像を実現
・柔軟な画面共有を実現
・参加者間でチャットが可能
・Wi-Fi、3G、4G/LTEなど多様なネットワーク環境で利用可能
・デバイスやコンピュータに依存しないクラウドサービスを提供
・Windows, Mac, iPhone and iPadなど幅広い動作保障
Zoom急成長の軌跡
Zoomはリリース後、急速な勢いでユーザーの獲得に成功しますが、最初のクライアントがその認知向上に大きく貢献しています。その最初のクライアントはスタンフォード大学で、オンライン学習プラットフォームを提供する目的でZoomを採用しています。実はZoomが有料のサービスをリリースする前に、α版をパイロットとして利用してくれたのがスタンフォード大学でした。
その後、Zoomは利用者を順調に伸ばし、リリースから1年を迎える前に200万人を突破し、2年経たないうちに1,000万人に利用されるサービスに成長します。その勢いは投資家の目にも止まり、シリーズAラウンド(2013年1月)からシリーズDラウンド(2017年1月)まで計1億5千万ドル近い資金調達に成功し、2017年には評価額が10億ドルを超え、ユニコーン企業に仲間入りします。
その後もZoomは順調に成長を続け、ついに2019年4月18日NASDAQに上場します。一般的にアメリカのSaaSスタートアップが赤字で上場するのに対して、Zoomは黒字で上場を果たした稀有な事例となりました。
アメリカで成功する上で英語より大切なこと
英語も話せなかったエリックがWebExで800人のエンジニアを統括する役割を担い、今や2億人を超えて利用されるZoomのCEOとして組織を牽引するまでに至った秘訣はどこにあったのでしょうか。
一般的に、アメリカで働くアジア人は言葉や文化の違いから昇進が難しいとされており、マイノリティの昇格の難しさを表した言葉『Glass Ceiling(ガラスの天井)』をもじって『Bamboo Ceiling(竹の天井)』という言葉まで存在しています。
エリックは、オープンで透明性の高いコミュニケーションを取ることをアドバイスしています。多くのアジア人は使命感が強いために、仕事が完了するまで報告しないことが多いのですが、シリコンバレーでは途中でも積極的にコミュニケーションを取ることが好まれます。インド人のエンジニアがシリコンバレーで成功するケースが多いのは、インド人のコミュニケーション能力の高さにその理由があるとも主張しています。
最後に
エリック・ユアンの成し遂げたことは、これまで取り上げた起業家の中で一番まねしやすいのではないかと思いました。自分の経歴を活かして、一番得意な領域であるビデオ会議で、小回りのきくスタートアップでしか実現の出来ないサービスを新たに開発するプロセスは、日々真剣に仕事に向き合う心さえあれば、再現することが出来ると思います。
ただ、ビザの申請を8回も却下されても渡米をあきらめない、不屈の精神こそがユアンならではの本当の強みであるようにも思います。
今回は以上になります。
ここまで読んでくださりありがとうございました。
追記:コロナ時代のテレワークの参考にこちらがおすすめです。