起業家に学ぶ仕事論:Uber創業者トラビス・カラニック(後編)

こんにちは、てぃーです。

前編 に続き、配車サービス『Uber』、フードデリバリーサービス『Uber Eats』を生み出し、インターネットを介して個人と個人の資産を共有する『シェアリングエコノミー』の考え方を流行させたUber Technologiesの元CEOトラビス・カラニック氏を取り上げたいと思います。

後編となる今回は、Uberの成功からCEO辞任までの物語、彼が語る成功のエッセンスをお伝えできればと思います。



UberX、Uber POOLのリリース

2011年5月ニューヨークに進出し、11月にはパリで初の海外進出を果たします。2012年7月にはUberXをリリースし、登録できる車種とドライバー資格の敷居を下げることで、タクシーの半額近い料金での配車を実現することに成功します。

さらに、2014年8月にはサンフランシスコで相乗りサービスUber POOLの提供を開始します。Uber POOLは同じ方面へ向かう乗客をマッチングし、相乗りしてもらうことでより安価に配車を実現するサービスで、これこそがUber創設時のライドシェアのアイデアそのものだったと言えます。


Uber Fresh(後のUber Eats)のリリース

今や日本でも人気のUber Eatsですが、その始まりは2014年にサンタモニカでテストリリースしたオンライン宅配ランチサービスUber Freshにあります。

Uber Freshは、平日ランチタイム限定のサービスで、一律12ドルで週によって変わる何種類かのセットメニューから好きなメニューをオーダーすることが出来ました。


反発

テクノロジーの力で安価な配車サービスを提供し、業界の常識を破壊したUberですが、誰でも運転手になれるようになったことで、既存のタクシー運転手から規制を求める声が上がってしまいます。

2015年にはパリやバルセロナで3,000人近くのタクシー運転手が抗議運動を行い、一部が暴徒化する事態にまで発展しています。

さらに、Uber運転手からも生活苦から抗議の声が上がり始めます。Uberは自家用車を使用していない時間を利用した副収入としての利用を宣伝していましたが、実際には生活するための収入源としてUberに登録している運転手が少なくなかったのです。

2013年12月には35,000人近くのUber運転手がUberに対して雇用を求めて裁判を起こし、これまで取り決められていなかった最低賃金を定めることになりました。


スキャンダルから辞任へ

事業の急成長と引き換えにするかのように、タクシー業界、Uber運転手からの反発だけでなく、幾つかの事件をきっかけにUberの企業体質に批難が集中することになります。

その最初の事件は、2014年のUber幹部の相次ぐスキャンダルでした。複数の幹部社員がGod Viewと呼ばれる全ユーザーのリアルタイムの利用状況と利用履歴のデータベースへアクセスし、正当な理由なく個人情報を取得した疑いをかけられてしまいます。

2017年2月にはUber社内でセクハラが横行していることを元従業員のSusan Fowler氏に暴露されてしまいます。カラニック自身も当時交際していた彼女に女性差別的な一面があることを告白され、体質改善のために内部調査を行うことを余儀なくされます。

さらに不運なことに、2017年3月にカラニックがUber運転手とUberの価格設定について口論になっている動画をネット上に晒されてしまい、ますます不評を買ってしまいます。

最終的には、2017年5月にボート事故で母親を失ったことをきっかけに、プライベートな理由で休職し、6月にはついにUber CEOを辞任することになります。


Cloud Kitchensへシフト

UberのCEOを辞任したカラニックは、2016年に創業した配達専用レストラン向けに厨房設備を低価格で提供するCloud Kitchensに重心を移し、すでに活動を始めています。

Uber Eatsをはじめとするフードデリバリー市場が盛んになったことで、近年ゴーストレストランと呼ばれる店舗を持たない配達専用のレストランがたくさんオープンしています。

既存のレストランが良いロケーションを選んで出店することで家賃などのコストが膨らむのに対して、ゴーストレストランの場合、立地を気にせずにキッチンを構えることが出来るため、コストメリットが大きいと言われています。


オタクから実業家になるには・・・

こちらの動画でカラニックが自身の人生を振り返りながら、オタクから実業家へと生まれ変わるために必要なエッセンスを以下のように話しています。

Geek Credentials(オタクを極める)
Find Something BROKEN(壊れたモノ、コトに気づく)
How hard is your problem?(問題がいかに重大であるかを問う)
Be Analytical and Creative(分析力と創造力を兼ね備える)
Perception VS Reality(感覚と現実の違いを理解する)
Make Magic(魔法をかける)
Selling & Storytelling(売ることと語ることを両立する)
The Champion’s Mindset(王者のマインドセットを持つ)


最後に

Scour、Red Swooshで仲間の裏切りに遭い、極貧生活を経たのちに、Uberが成功をおさめハッピーエンドで終わるかと思えば、自らの身から出た錆で辞任に至るカラニックの波乱万丈の人生は非常に人間味があって、上場企業の社長というよりはシリアルアントレプレナーという方が彼には向いているように思いました。

Cloud Kitchensをはじめ、新たなチャレンジも始めているようなので、今後とも注目していきたいと思います。