こんにちは、てぃーです。
今回は、G SuiteやOffice365などに代表されるSaaS(Software as a Service)の概念を生み出したセールスフォース・ドットコムの創業者でCEOのマーク・ベニオフ氏を取り上げたいと思います。
SAP、オラクルをはじめとする企業向けのエンタープライズソフトウェアは、自社のサーバーにインストールして利用するのが当たり前でした。
そんな時代にブラウザ上で利用できるアプリケーションをサービスとして提供する、いわゆるSaaSの概念をビジネスとして成功に導いたのがマーク・ベニオフという人物です。
オラクルで史上最年少の幹部に就任したベニオフが、その地位を捨てて顧客ファーストの慈善家に生まれ変わり、世界中にSaaSブームを巻き起こす火付け役になるまでの物語をお届けしたいと思います。
目次
プロフィール
氏名:Marc Russell Benioff
生年月日:1964年9月25日
出身:アメリカ合衆国カリフォルニア州サンフランシスコ
Twitter:https://twitter.com/benioff
経歴
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高校在学中にソフトウェアを開発し、コンピュータ雑誌に75ドルで売る
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1979年
コンピュータゲーム会社を設立(15歳)
高校生にして1カ月に1,500ドルを稼ぐ
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1984年
スティーブ・ジョブスのもとでインターンシップを経験(20歳)
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1986年
南カリフォルニア大学を卒業し、オラクルに入社(22歳)
入社1年目でルーキー・オブ・ザ・イヤーに選ばれる
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1990年
史上最年少でオラクル幹部に就任(26歳)
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1999年3月
アパートの1室でセールスフォース・ドットコムを設立(34歳)
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2000年2月
Salesforce.comを公式にリリース(35歳)
No Softwareキャンペーンを実施
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2004年6月
ニューヨーク証券取引所に上場(39歳)
1億1,100万ドルの資金調達に成功する
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2005年
AppExchangeをリリース(40歳)
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2012年
Salesforce Marketing Cloudをリリース(47歳)
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2013年
Salesforceがモバイルに対応(47歳)
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2016年
Salesforce Einsteinをリリース(51歳)
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2019年8月
タブローソフトウェア買収を発表(54歳)
高校生で月に1,500ドルを稼ぐ
ベニオフは高校時代にLiberty Softwareというコンピューターゲームの開発会社を設立しています。
『King Arthur’s Heir』『The Nightmare』『Escape from Vulcan’s Isle』『Crypt of the Undead』といったタイトルを開発し、月に1,500ドルに及ぶ収入は大学の学費を工面することが出来るほどでした。
スティーブ・ジョブズのもとでインターンを経験
ベニオフはアップル創業者のスティーブ・ジョブズと深い交流があります。
最初の出会いは、ベニオフが大学生の夏にアップルでインターンとして働いたときでした。その年はちょうど初代Macintoshが発売された年で、ベニオフはMacintoshのプログラマーとして働いていました。
ベニオフとジョブズはその後も交流を続け、ベニオフがSalesforceを創業するときにもジョブズから3つの助言をもらっています。
①Salesforceを2年以内に10倍以上の組織に出来なかったら会社を畳むべきだ
②まずは大口顧客と契約を結ぶべきだ
③アプリケーションのマーケットを作るべきだ
特に③のアドバイスを受けて、ベニオフはSalesforce.comのプラットフォーム上で利用できるアプリケーションのマーケットAppExchangeを2005年にリリースしています。
アップルも2008年にAppStoreをリリースしますが、ドメインはベニオフから譲り受けたものです。ジョブズの助言を受けたベニオフがいつか必要になることを予想して事前にドメインを購入していたのです。
史上最年少でオラクル幹部に就任する
大学卒業後、ベニオフは巨大ソフトウェア企業オラクルに入社します。
ベニオフは入社1年目で営業として大きな成果を残しルーキー・オブ・ザ・イヤーに表彰されます。さらに3年後には、なんと25歳の若さでオラクル史上最年少の幹部に就任します。
ベニオフはオラクルで営業、マーケティング、商品開発の部門を率いていますが、特にアイデアマンとして高く評価されています。
彼のアイデアから生まれた製品のおかげで、オラクルはメインフレームコンピュータ向けの商材からパーソナルコンピュータ向けの商材を扱う会社への方向転換に成功しています。
ヒンドゥー教の導師からの教え
オラクルに10年近く勤め、31歳になったベニオフは変化を求めて3カ月の旅行に出ます。その旅の中で、彼はインドの名もない村を訪れ、あるヒンドゥー教の導師から教えを得ることになります。
そのヒンドゥー教の導師はマーター・アムリターナンダマイーという女性の有名なスピリチュアルリーダーの一人で、彼女を訪れる人を一人ひとり抱きしめる行為で世界中の人から「アンマ(お母さん)」と慕われていました。
共に旅をしていたインド人の友達が新しいビジネスへの投資をアンマにお願いすると、彼女はベニオフに向かって次のような教えを説きます。
世界を変える旅の中で他の誰かのために何かをすることを忘れないようにしてください
アンマとの出会いにより、ベニオフはビジネスと慈善事業を両立することが出来ることに気づき、偉大な慈善家の一人として生まれ変わることになります。
セールスフォース・ドットコムの誕生
1999年3月8日にセールスフォース・ドットコムはサンフランシスコのアパートの一室で創業します。
セールスフォースの始まりは、インストールすることなくブラウザ上で動作するビジネスアプリケーションを作るというベニオフの発想に、営業支援システムを開発していたハリス、モーレンホフ、ドミンゲスの3人の技術力が加わったところにあります。
当時はドットコムバブルで競合も多かったため、いち早くリリースすることを目標にして、最初の試作品をなんと1カ月も経たないうちに完成させています。
見た目はおしゃれではなかったですが、とにかく使いやすさを追求して、スクリーン上部のタブに商談、顧客などの必要最低限の情報項目が並んだ分かりやすい設計となりました。そして2000年2月7日に正式にリリースされます。
No Softwareキャンペーンの実施
Salesforceが最初に世間に知れ渡ったのは、リリース同年に実施したNo Softwareキャンペーンでした。
No Softwareのアイデアは、ベニオフがインターネット上で動作するソフトウェアという概念を伝えるために思いついたものでした。競合のSiebel Systemsが主催する展示会に数名の従業員を送り込み、No Softwareのプラカードを掲げて抗議活動を行ったことで、メディアに露出することに成功しています。
攻めのM&A戦略
2004年6月に上場したことで1億1,000万ドルの資金調達に成功したセールスフォースは積極的なM&Aを通じて成長する戦略を開始します。
2006年にワイヤレス技術を提供するSendiaを買収したことを皮切りに、2020年までになんと50社を超える企業を買収しています。
中でも最大のものは、2019年8月に157億ドルで実施したタブローソフトウェア買収でした。BIツールTableauを手掛けるタブローソフトウェアを買収することで、セールスフォースはデータ分析を起点とした顧客体験を提供できるようになりました。
過去には機械学習やAIテクノロジーを手掛ける企業の買収も実施しており、今後の動きにも注目です。
企業カルチャー
セールスフォース・ドットコムの成長を支える企業カルチャーの一つに『1-1-1モデル』があります。
『1-1-1モデル』とは、製品の1%、株式の1%、就業時間の1%を活用してコミュニティに貢献するというシンプルな社会貢献モデルです。
こちらのコンセプトムービーの中で、1日8時間のうち1%にあたる5分間を世の中のために捧げることで、それは1年間で20時間分の活動になると訴えています。
実際にセールスフォースは1999年の創業以来、同社が製品提供を通じて支援してきた、非営利団体の数は世界で27,000団体以上、助成金は1億ドル以 上、社員がボランティア活動に費やしてきた時間は110万時間以上にのぼります。
最後に
13年間過ごしたオラクルを辞めて、競合するサービスを自ら開発し成功を収めたマーク・ベニオフのキャリアは、前回取り上げたZoomの創業者エリック・ユアンと似ているところがあると思いました。
私の会社でもSaaSのサービスを扱っているので今後の業界全体の動きには注目していきたいところです。
今回は以上になります。
ここまで読んでくださりありがとうございました。