起業家に学ぶ仕事論:チャン・イーミン

こんにちは、てぃーです。

今回は、日本の若者の間でも大流行したTikTokの運営会社ByteDance(字節跳動)CEOの張一鳴(チャン・イーミン)氏を取り上げたいと思います。

TikTokは、15秒の動画を投稿し共有するプラットフォームで、2018年に日本の10・20代の若年層の間で大流行し、2018年の新語・流行語大賞でノミネートされるほどの社会現象を巻き起こしたアプリですが、実は中国にその由来があります。

TikTokの生みの親であるチャン氏の過去に迫り、中国で生まれ育った彼がFacebook、Twitter、Instagramに肩を並べる世界規模のSNSを生み出すことが出来た訳に迫りたいと思います。

プロフィール

氏名:張一鳴(Zhang Yiming)
生年月日:1983年4月
出身:中華人民共和国福建省竜岩市


経歴

  • 2005年

    南開大学コンピューターエンジニアリング専攻を卒業(22歳)

  • 2006年2月

    旅行サイトを運営するKuxun(酷讯)に5番目の従業員として入社(22歳)

  • 2008年

    マイクロソフトに入社もすぐに辞めてFanfou(饭否)に転職(25歳)

  • 2009年9月

    99fang.com(九九房)を創業(26歳)

  • 2012年

    99fang.com(九九房)CEOを退任し、ByteDance(字節跳動)を創業(29歳)

  • 2012年7月

    シリーズAラウンドで500万ドルの資金調達に成功(29歳)

  • 2012年8月

    ニュースアプリToutiao(今日头条)をリリース(29歳)

  • 2013年

    1,000万ドルの資金調達に成功(30歳)

  • 2014年

    シリーズCラウンドで5億ドルの資金調達に成功(31歳)

  • 2016年9月

    動画共有プラットフォームTikTokをリリース(33歳)

  • 2017年

    musical.lyを10億ドルで買収(34歳)


入社2年目にして50名のエンジニアを束ねる

チャンは大学を卒業して入社した最初の会社でたった2年のうちに50名近くのエンジニアを束ねるリーダーとしての地位を築いています。チャンは旅行サイトを運営するスタートアップKuxun(酷讯)の5番目の従業員で初のエンジニアとして入社しています。

Kuxunは一番多い時期で170人程度の組織でしたが、チャンをはじめ30人を超えるエンジェル投資家や起業家を世に送り出しています。すべての会社を合わせると、時価にして1,000億元(約140億ドル)近くになると言われています。


Microsoftに馴染めずスタートアップに戻るも挫折を味わう

チャンはより良いキャリアを求めて、Kuxunでの実績をもってMicrosoftに入社しますが、会社の文化になじむことが出来ずにすぐに辞めてしまいます。自分のクリエイティビティが会社のルールのせいで抑えつけられているように感じたことが理由でした。

チャンはMicrosoftを辞めてスタートアップFanfou(饭否)に入社しますが、不運なことに今度は事業を続けることが出来なくなってしまいます。Fanfouは中国バージョンのTwitterでしたが、2009年7月に発生した新疆ウイグル自治区での抗議運動に使用されたことで、政府から強制的にシャットダウンさせられてしまいました。


初めての起業に成功

Fanfouが失敗に終わると、ついにチャンの人生に転機が訪れます。前職だったKuxunがトリップアドバイザーへの事業売却の検討を始めると、チャンはKuxunの不動産検索サイトのメンバーを誘って、99fang.com(九九房)を設立します。

その後、99fang.com(九九房)は中国全土で300を超える都市の物件を掲載し、月間600万を超えるユーザーに利用される中国最大の不動産検索サイトに成長しています。


ニュースアプリが大ヒット

PCからスマートフォンの時代への移り変わりを見たチャンは、たった2年で99fang.comのCEOの座を譲り、スマホアプリの開発を行うByteDanceを設立します。ByteDanceは、ニュースアプリ今日头条(Toutiao)が大ヒットしたことで知名度を獲得することに成功しています。

今日头条(Toutiao)は様々なメディアに掲載されているニュースの中からユーザーが求めているものを選別し配信する、いわゆるニュースアグリゲーションアプリです。日本でいうとSmartNews(スマートニュース)やGunosy(グノシー)が代表的な例になります。

今日头条(Toutiao)の最大の特徴は、データ分析と推薦アルゴリズムを活用することで読者にパーソナライズしたコンテンツと広告を届けることが出来るところにあります。そのため、一般的なニュースアプリには編集者がいるのに対して、今日头条(Toutiao)には編集者がいません。さらに、今日头条(Toutiao)はユーザー自身のコンテンツやショートビデオを投稿することも出来ることで、他のニュースアプリと一線を画しています。

今ではデイリーアクティブユーザー(DAU)は1.2億人を突破しており、1日に読まれる記事数は13億本以上、ビデオの再生数は15億回以上と世界有数の規模を誇っています。


TikTok大ヒットの理由

TikTokは15秒動画のソーシャルプラットフォームです。日本では2017年8月にサービス提供を開始し、2018年に10・20代の若年層を中心に大流行しました。世界でも150以上の国と地域で展開されるようになり、リリースからたった2年で米App Storeで最もダウンロードされたアプリに輝いています。

TikTok最大の特徴は、口パクで投稿できるという手軽さにあります。音楽に合わせて口パクすることを「リップシンク」と呼び、近年SNSで人気の表現技法になっています。実は、リップシンクを使った動画系SNSとしては、musical.ly(ミュージカリー)という先行するサービスが既にあったため、後発だったTikTokはmusical.lyを10億ドルで買収して市場でNo.1の地位を獲得する戦略を展開しています。


世界最大のスタートアップに

ByteDance(バイトダンス)社は企業価値10億ドルを超える未上場企業、いわゆるユニコーン企業に2017年4月に仲間入りしています。アメリカの調査会社 CBインサイツが発表するデータによると、2020年5月現在のユニコーン企業ランキングで企業価値750億ドルでナンバーワンの座を獲得しています。

19年5月に時価総額700億ドルで上場したUberと並び、GAFA(Google/Amazon/Facebook/Apple)やBAT(Baidu/Alibaba/Tencent)を脅かす存在となっています。


最後に

ユニコーン企業ランキングのByteDance(バイトダンス)の業種がArtificial Intelligence(人工知能)になっているのを見て、私の中でSNSに対する見方がガラッと変わりました。

特に、これまで取り上げてきた中で、NetFlixが新しいレコメンドエンジンを賞金を懸けてコンペを実施しているのを思い出し、人工知能の勝者が次のプラットフォーマーになるのではないかと思うようになりました。

さらに、人工知能に強みを持つ企業が中国から生まれていることは、これからの世界の中心が中国になっていくことを予感させるものだと思いました。日本も負けずにがんばっていきたいですね。


今回は以上になります。

ここまで読んでくださりありがとうございました。